Background the film 炭鉱について・
映画学校について

ブレザ炭鉱について

『鉱 ARAGANE』の舞台は、ボスニア・ヘルツェゴビナのゼニツァ・ドボイ県ブレザ町にある炭鉱です。首都サラエボから北西に約30キロに位置し、天候が良ければ車で40分ほどの距離です。

ブレザ炭鉱は石炭の埋蔵量がヨーロッパでもっとも多いとされる炭鉱のひとつで、約7300万トンの亜炭と褐炭が埋蔵されていると言われています。坑内掘りの坑道がふたつ、露天掘りがひとつあり、撮影させていただいたのは坑道のひとつである’Sretno’坑内です。(スレトノ: ボスニア語でグッドラックを意味します)

ブレザ炭鉱の運営会社は1907年に創立されました。年間60万トンほどの採掘が可能で、平均年間採掘量は約45万トンとされています。坑夫の方や、プロセス工場で働く方々、事務所で働く方々の総員は現在約1250名とされ、ブレザ町に暮らす人びとの主な雇用先です。

内戦後、悪化する経済状況の中でより安定した運営を目指すために、ブレザ炭鉱は2009年より県営の電力会社と合併しました。翌年には、経営成績を上げたとされていますが、国を治める政党が変わる度に、会社の代表や幹部が政治的介入によって入れ替わり、安定した運営が行われているとは言い難いようです。大型重機を取り入れることで掘削量は年々上がっていますが、それに反比例して坑夫の方たちの給与は下がり、ひと昔前には1000ユーロだった月収が今は600ユーロほどまで下がったと言われています。

1日3シフトで24時間絶え間なく掘削が行われ、ひとつの坑に1シフト約40名の坑夫が働きます。1000トン〜1500トンの石炭が毎日採掘され、価値にすると8万〜24万ユーロほどです。

炭鉱には事故がつきものですが、ブレザ炭鉱も2012年5月にスレトノ坑内で有毒ガスから火災が発生、第一発見者である方が亡くなられました。その後、坑の調査と修復のために同坑に入った坑夫の方も救命呼吸具の不具合により命を落とされました。事故の起こった週末に、常駐するべき責任管理者がいなかったこと、事故の初期段階でなぜ対応ができなかったのかなど、いまだ解明されていません。私が撮影していた時期(2014年秋から翌年春頃にかけて)には、もう一方の坑道であるカメニツァ坑内で火災が発生し、立ち入りが禁止されていました。

はじめてブレザ炭鉱に訪れた日、旧ユーゴ時代のチトー大統領に表彰されたアリヤ・シノタノヴィッチさんの黄金に塗られた像を紹介していただきました。当時旧ソ連の模範労働者よりも、1日に多く石炭を掘った記録をもつ方だそうです。
社会主義労働者の英雄として讃えられていました。

(小田香)

映画学校【film.factory】について

私たちの周囲にイメージが氾濫する時代であるにもかかわらず、この美しい伝達言語は毎日悪化の一途をたどっている。
私たちは視覚的文化とイメージの尊厳の重要性を、次世代の映画作家たちに証明したいのだ。
徹底的に、確信をもって。
責任感があり、ヒューマニズムの精神をもつ成熟した映画作家や、独自の映像言語をもち、その創造力を現実世界の人間の尊厳を守るために発揮するアーティストと共に、このプロジェクトに従事することが私たちの願いである。

——————タル・ベーラ

While there are more and more images everywhere around us, paradoxically, we perceive the increasing devaluation of this beautiful language every day. It is in this context that we are seeking to demonstrate, emphatically and convincingly, the importance of visual culture and the dignity of the image to the coming generation of filmmakers. Our aspiration is to working with mature filmmakers who think responsibly, with the spirit of humanism, artists who have an individual outlook, an individual form of expression and who use their creative powers in the defence of the dignity of man within the reality that surrounds us.  

—————Bela Tarr

10月21日(土)〜 新宿 K’s cinemaにてロードショー

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